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給与所得者と個人事業主の税金はどっちが高い?

自営業者は所得を少なく申告して、税金逃れをしているという風潮が世間一般にはあります。

いわゆるクロヨン(9割・6割・4割)などと言われていますが、給与所得者は源泉徴収で所得の「9割」が捕捉されているのに対し、自己申告の自営業者は「6割」、農業や林業、水産業などでは「4割」しか捕捉されていないと考えられています。

これに加えて、個人事業主はプライベートな出費も経費にして所得を少なく見せかけているため、十分に税金を払っていないとされています。これらが自営業者よりもサラリーマンの方が税金が高いとされる主な理由になっています。

けれども、実際にはそのような所得隠しはできるものではありませんし、自営業者だからといって何でも経費に計上できるわけではなく、事業で出費した分しか経費にはできません。

フリーランスのようなあまり経費のかからない業種の場合、せいぜい売上の「1割」程度しか経費に計上できない業種もあります。

一方、サラリーマンの場合、源泉徴収のため所得隠しは不可能ではあるものの、経費については優遇されています。給与所得者なら誰にでも給与所得控除があり、無条件で経費が計上されていますので、平均的な年収400万円のサラリーマンの経費率は「約3割」になります。

身銭を切って実際に出費した分しか経費にできない経費率「1割」の個人事業主からみると、領収書もなしに無条件で経費が「3割」も認められているサラリーマンは税金面でかなり優遇されていると感じるのが実際のところです。

このような世間一般のイメージとは違う実態があるため、個人事業をはじめたものの、1年程度ですぐに廃業して法人化してしまう人も多いです。

給与所得控除の有無による経費率の違い

個人事業主には給与所得控除がない分、実際には税金負担が重い傾向にあります。この給与所得控除はサラリーマンの必要経費にあたるものですが、仕事をする上での経費が一括で控除されています。

個人事業主の経費と比較しますと、領収書などの保存の必要はなく、年収に応じて一律で控除されるため、実際にその経費がかかったかどうかは関係ありません。

個人事業主の場合は領収書が必要なため、実費での負担が必ず伴うものですが、給与所得控除は費用がかかっていなくても無条件で差し引かれる経費になります。

その分、サラリーマンの税金負担は軽減されている傾向にあり、個人事業主が法人成りをするメリットはこの無条件で控除される給与所得控除があるためともいえます。

ただし、この控除額は年収に応じて一律で決まっているので上限があり、膨大な必要経費を自腹で払っているサラリーマンはむしろデメリットともいえます。

仮に、サラリーマンの平均年収を400万円と仮定しますと、この場合の給与所得控除は「400万円×20%+54万円」で134万円になりますので、給与所得者の経費率は約3割になります。

もし年収400万円のサラリーマンが仕事をする上で膨大な経費がかかっている場合、134万円分しか経費にならないため、このようなケースでは損をしていることになるかもしれません。個人事業の場合は領収書さえあれば、仕事でかかった経費はすべて計上できるのに対し、サラリーマンは一定以上は控除されない違いがあります。

とはいえ、一般的なサラリーマンの場合、業務に必要なものは会社から備品として支給されますし、出張代などの必要経費も会社から支給されるはずです。自腹で年収の3割以上の必要経費を負担している人はまずいませんので、たいていは3割以下に収まっているかと思います。

追記:)2018年度の税制改正により、2020年1月から会社員の給与所得控除は一律10万円の減額となる予定です。

「国民年金」と「厚生年金」の保険料負担を比較

個人事業主は国民年金に加入することになりますが、国民年金は基礎年金部分のみになるため、上乗せ分のある2階建ての厚生年金と比べると保険料負担が軽いです。

一方、サラリーマンの厚生年金は保険料負担が重いものの、会社との折半になりますし、2階建ての分、将来もらえる年金額が厚くなります。

国民年金で厚生年金と同じレベルの年金額を確保しようとすると、別途に国民年金基金などに加入する必要がありますが、会社との折半ではないため分が悪いかもしれません。

加えて、年金保険料は全額が所得控除の対象になりますので、たとえ厚生年金の負担が多くなったとしても、その分、社会保険料による所得控除が多くなるため、所得税や住民税の負担は軽減される傾向にあります。

例えば、協会けんぽの場合、会社との折半額で上限55, 266円となっていますので、単純に考えると年間66万円程度まで所得控除にすることができます。

一方、個人事業主の国民年金の場合、月額1万5,590円(平成27年度)で固定されているため、どんなに所得が多くなったとしても年間18万円程度しか所得控除にはなりません。

その分、個人事業主の所得税や住民税は負担が重くなる傾向にあります。

年金については将来もらえる分も加味しなくてはなりませんし、社会保険料の負担増による所得控除も考慮に入れなければならないため、単純には比較できませんが、会社との折半だけを考えても負担は軽減されているものと思われます。

個人事業主とサラリーマンの健康保険料の違い

個人事業主は国民健康保険に加入しますが、国民健康保険の加入者は年金生活者や無職の方の割合が多く、慢性的な赤字状態となっているため、収入のある現役世代の負担が重くなる傾向にあります。

旧ただし書き方式へと一本化されましたので、所得割に反映される所得控除はほとんどなく、ある程度の所得があれば高額な保険料負担になるケースが多いです。

一方、会社の健康保険の場合、保険料は会社との折半になりますし、また会社員であれば収入のある現役の人たちばかりなので保険料の負担も軽い傾向にあります。

仮に、協会けんぽのサラリーマンの場合、年収1,000万円程度で月5万円の保険料負担になりますが、国民健康保険の個人事業主の場合は年間400万円程度の所得でも月5万円に達してしまう自治体が多いです。

また、大企業の健康保険組合の場合は組合の規約によって違いますが、保険料負担が安く設定されている会社も多いです。

一般的にサラリーマンの健康保険料負担については、会社との折半となるため、個人事業主よりも軽い傾向にあります。

青色申告特別控除は65万円で割に合うか?

個人事業主の場合、複式簿記による正規の記帳をすることで年間65万円の青色申告特別控除を受けることができますが、この経理の仕事を自分でする労力を考えると、年間65万円の所得控除で割に合うかどうかはケースバイケースです。

税額控除ではないため、65万円の所得控除ではそれほど税金が安くなるわけではありません。

事務員一人分の仕事量をこなして年間65万円の所得控除では物足りないでしょうし、片手間で済む仕事量でしたら逆にメリットといえるかもしれません。

サラリーマンの場合は会社の経理担当者がすべてやってくれますし、納税についても給与から天引きされるので、納税にかかる面倒な作業をしなくてもよい点でメリットが多いといえます。


その他、個人事業税などもかかってきますし、どちらの税金負担が高いかというとケースバイケースにはなりますが、一般的には個人事業主の税金負担の方が重いといえるでしょう。


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