日産のゴーン会長が役員報酬の虚偽記載の容疑で逮捕されてしまいましたが、まだ実際に支払ってもいない、数年後に支払う「将来の約束」でも役員報酬と見なされることがあります。
大企業の場合でも処理の仕方で問題になることがあるため、一人会社の場合はなおさら難しいですが、基本的に役員報酬は「定期同額給与」がポイントになります。定期同額のため、報酬額をいつでも自由に変更できるわけではなく、事業年度にわたって毎月同額を支給する必要があります。
変更する際は事業年度の開始の日から3か月以内と覚えておくとよいでしょう。
この役員報酬が定期同額である理由についてですが、もし役員報酬をいつでも自由に変更できるとした場合、決算前に報酬額を増やすことで利益操作が可能になってしまうからです。
例えば、決算前に会社の利益が想定以上に発生していた場合、そのままだと法人税で払う部分が多くなってしまいますが、自分の役員報酬を増やすことにより、この利益を消すことが可能になってしまいます。結果として法人税を払わなくて済むことが可能になってしまうため、会社の業績に関わらず、その事業年度の間は役員報酬を自由に変更できない決まりになっています。
この自由に変更できないという点で、従業員の給与と経営者の役員報酬で違いがあります。
上記のように役員報酬は定期同額給与のため、報酬を改定できる時期が決まっており、事業年度の開始の日から3ヶ月以内となっています。当サイト運営者の場合は合同会社のため、社員総会にて改定決議をして議事録を作成しましたが、株式会社の場合は株主総会を開いて報酬額を決議することになります。
もちろん、会社で決議しただけでは納める社会保険料が下がりませんので、年金事務所に届出をして改定してもらう必要がありますが、実際の手続きについてはこちらのページをご参照ください。
→ 役員報酬の増額・減額変更の手続き
ここで出てくる疑問は「期首の初めの月から改定できるのか?」という点かと思います。
例えば、3月末決算で4月1日から新しい事業年度が開始される場合、4月分の報酬から変えてしまうのは可能なのかという疑問がありますが、改定には総会での決議が必要になりますので、5月に株主総会を招集する場合などは間に合わないはずです。
この点についてですが、一般的には改定の決議をしたあと、最初の役員報酬の支給日からの変更になります。
そのため、仮に4月末締めの翌5月15日払いの場合、5月10日に総会で改定決議をした場合などは、最初の支給日が到来する5月15日(4月分の報酬)から変えてもよいことになります。
一方、5月20日に改定決議をした場合は5月15日の支給日は過ぎていますので、次の支給日にあたる6月15日(5月分の報酬)から変更すべきです。期首から役員報酬を変更する場合には、改定決議をはやめに済ませておくとよいでしょう。
役員報酬を業績不振などの理由(業績悪化改定事由)で止むを得ずに減額できる場合もありますが、一般的には、決算後、新しい年度が始まって3か月以内に変更する必要があります。
この役員報酬額の決め方についてですが、赤字決算での欠損金の繰越も考慮に入れて決めることをおすすめします。
一般的に、黒字決算の場合は役員報酬を増やし、赤字決算の場合は減らす形になりがちですが、法人の赤字の欠損金は10年間繰り越すことができるため、10年単位で考えて最適な水準で毎年支給すると節税につながる可能性があります。
例えば、ある年度に1500万円の役員報酬を支給し、約400万円の税金を払ったとします。そして、翌年は大幅な赤字になったため、報酬額を100万円まで減額して納める税金を0円にしたとします。この場合、合計1600万円の報酬額で税金は約400万円納めることになります。
一方、この1600万円をそれぞれの年度で800万円と800万円に分けて支給した場合、800万円の場合は約140万円程度の税金のため、合計で約280万円程度で済むことになります。
このように、ひとつの年度に偏って多額に支給したり、あるいは極端に少ない金額を支給したりした場合、5年単位、10年単位で考えれば、納める税金の額が増えてしまいがちです。
そのため、黒字決算でも赤字決算でも常に一定の水準で支給するようにしておき、税率の低い水準の部分で安定的に支給していくことをおすすめします。
当サイト運営者の場合、会社に資金を貸し付けても自分の役員報酬は所得税率10%以上になるように払っています。
例え、ある年度に報酬額が増えて赤字になった場合でも、法人の赤字の欠損金については10年間繰り越すことができるため、後で損益通算することができます。個人の所得については繰り越すことができませんので、役員報酬額については一定の水準で支給するとよいでしょう。
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